Kyoto City University Of Art annual exhibition 2020

Serino Yamaguchi 山口汐璃乃 染織

山口さんは現在、染織専攻でどのような作品作りを行われていますか?モチーフとしてよく扱うモノなどがあれば、それについても詳しくお聞きしたいです!

お手紙ありがとうございます!
私は現在、卒業制作で、手描き友禅の着物を制作しています。この作品は完成し、作品展で展示した後は仕立てて卒業式で着る予定です〜。(上手くいけば…ですが)

モチーフとしてよく扱うもの…ということですが、私は2回生の作品展制作から「山」と「組紐」をモチーフに制作しています。この2つのモチーフはどちらも私の故郷や家族と関係しています。卒業制作でも「山」と「組紐」をモチーフにしています。

自分で作ったものを晴れ舞台で身につけるのとてもかっこいいですね!

もしよろしければ、モチーフが「山」「組紐」にしぼられていった経緯をお聞きしたいです。

また、染織は使う道具やスペース的にも学校でしかできない作業が多いイメージなのですが、前期の4・5月の大学で制作できなかった期間はどのように制作をされていましたか?実際に今使っている技法やそれに伴う道具等もまじえてお話していただけると嬉しいです!

モチーフが絞られていった経緯ですが、“自分が一番ときめくもの”を突き詰めていったらこの2つになりました。

「山」は地元が山に囲まれた土地で小さい頃から身近にあって、その姿を眺めることが好きでした。時間の経過や季節の変化によって大きくその表情を変える面白さがあると思います。
「組紐」も実家が組紐屋を営んでいることから、幼い頃から組紐と触れ合ってきました。細い絹糸が何本もまとまって組まれていく形の面白さや色の鮮やかさが魅力的です。

前期、私は実家に戻って制作をしていました。車庫に制作スペースを作ってもらい、家でもできる制作方法を選びました。小さめの捺染台を自作して、タックフィルムという布に貼り付けられるフィルムを使って捺染しました。

現在は友禅の着物を制作しているのですが…。実はもう終了しました! 残すは手直しのみです。今は絵羽屋さんという反物を着物の形で展示できるように仕立ててくれる業者さんに作品を預けています。

友禅はおおまかに
構想→小下絵→原寸大草稿→下絵羽→青花→着物をほどいて反物の形に縫い直す→糸目糊置き→キハツ地入れ→骨豆→友禅→ロウふせ→地入れ→地染め→脱ロウ→蒸し・水元→湯のし・柔軟→仮絵羽
という順番で制作をしていきます。
・小下絵とは着物の形をイメージして下絵を描いていく作業です
・原寸大草稿は実際に染めるサイズと全く同じ大きさで下絵を描いていきます。
・青花は下絵羽に出して一度着物の形にしたものに原寸大草稿をうつしていく作業です。青花はのちに水元の作業で綺麗に落ちます。下書き的なものです。
その他にも様々な工程があります…色を入れる時は電熱であたためながら…とか

友禅をする時は学校で全てを完成させることはできません。外部の業者さんにお願いする工程も多いので本来の締め切りの1週間以上前が染めおわりの締めになったりもします…。何故かいつも修羅場になってしまいます。
友禅の工程はとても多いので書ききれずに少しだけはぶいてしまいましたが、もし気になる工程などあれば聞いてください~~!

山口さんは幼い頃からの環境が今の作品に影響しているんですね。友禅の作業工程も丁寧にありがとうございます!多くの過程を経て、いろんな人の手を借りて完成していくんですね。

制作について質問です。今回の友禅の作業の中で特に苦労したところ(時間・手間がかかった…など)や工夫したところをお聞きしたいです。

今回とても苦労したのは“糸目”です。ゴム糊を筒に入れて、チョコペンで絵を描くように下書きの上をなぞっていきます。糊がかたくなって出にくくなったり、筒自体がかたくなったり…とても時間がかかってしまいました。きれいな糸目を出すためにももっともっと練習しないといけないと思いました。

染織の方のSNSで糸目作業の動画を拝見したことがありますが、大きな布に細かい作業をされていて驚きました。地道な作業の積み重ねなんですね…。

さて、4回生の山口さんは今年度の作品展では京都市京セラ美術館での展示となります。去年までの学内での展示と何か心境の変化はありますか? 展示方法で思案していることなどあれば教えていただきたいです!

私自身、はじめての美術館展示です。
高校生のころ、市美で展示をしている京芸生の作品を見て「この場所で展示がしたい!」と思ったことも私が京芸を目指した理由の1つなので、4回生の卒業制作で京セラ美術館で展示ができることが、とてもうれしいです。

私は着物を展示します。裏側の八掛部分にも柄が入っているので、そちらも見ていただけるような展示を考えています。

憧れの場所に展示する、ということですね…。素敵です。京セラ美術館となり内装の印象も大きく変わった中で、皆さんの作品がどのように展示されるのかとても楽しみにしています。
いよいよ最後の質問です。山口さんは今まで大学4年間で制作した作品の中で一番印象に残っている作品は何ですか? その理由もぜひ教えていただきたいです。

まさにそうですね…憧れの場所での展示…楽しみです。
印象に残っている作品は、2回生の時の初めての自主制作です。2回生の作品展で展示をしました。ろうけつ染めという技法を用いて作品を作ったのですが、ハプニングでしめ切りギリギリに1から染めなおすことになり、とても大変だった思い出です。
しかし、1度失敗した分、その技法への理解も深まったと思っていて、その時はとても大変でしたが今思い返すと良い思い出だったと思います。そしてその作品は私が組紐を初めてモチーフにした作品でもあり、配色や展示方法にもこだわりました。テーマは“空間を結ぶ”で、伸縮性のある生地を使い光を通すことで向こう側の空気感や様子を感じることができます。自分がどのようなものに興味があるのか考えるスタートだったと思います。

(文字にすることに慣れていなくて、分かりにくい文章ですみません。自分の制作について考えるとてもいい機会になりました。ありがとうございました。)

ありがとうございました!

インタビュー:吉村 英珠

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