Kyoto City University Of Art annual exhibition 2020

Saya Hashimoto 橋本 小夜 総合芸術学・芸術学

芸術学細目修士1年の橋本 小夜(はしもと・さや)さんに、お手紙でお話を伺いました。
中国絵画の研究をされている橋本さんからは、研究テーマについてや大変なことなど、普段なかなか聞けない研究事情についてお話していただきました。

インタビューを引き受けていただきありがとうございます!よろしくお願いします〜
早速ですが、現在橋本さんはどのような研究をされているのでしょうか?

作品展委員 野村翠さんへ

インタビューのお誘い、光栄です。こちらこそよろしくお願いします。
読みにくい字ですが頑張ってください。

Q. 現在の私の研究について

専攻分野は東洋美術史です。
竹浪先生にお世話になっています。
内容としては、知識層である文人の絵画、その中に含まれる書と文学の関係についてです。
絵の画面の中に平然と文字が書き入れてあって、しかもそれが特に疑問にもなってないなんておかしくないですか? なので研究を始めました。

ものによっては画面の半分以上が文字であるものもあります。他人が書いたものすらありますよ。絶対鑑賞者は「ん??」ってなるでしょこんなん

だから絵と書と文学、三つの関係性を明らかにし、より中国絵画を鑑賞する人たちに「中国絵画ってこうやって見て楽しむんだなあ〜」と思ってもらいたいです。

確かに、西洋絵画を見ていたとしても中国絵画ほど文字が書かれているものってまず見かけないですよね…!

“書”と “文学”の関係、というところが特に気になったのですが、研究で取扱う作品は、どんな書で、どんな内容が書かれているのでしょうか…?

また中国絵画を研究していくうえで、大変なことや、他の分野にはない調査方法などはありますか…? ぜひお聞かせください!

①「研究で取り扱う作品は、どんな書でどんな内容が?」

 私が主に扱っているのは、中国の清の時代、その中でも乾隆帝という皇帝の時代の文人画です。特に揚州という土地にいた人たちです。

 文人はかなりおしゃべりなので、自分の作品にもたくさん文章を書くのですが、案外気の抜けた(?)ものも多いですよ。フワッフワの猫の絵にちょっと洒落た書体で、

「毎回晩ご飯に魚を買って帰るとき、小さいやつを買うのを忘れないようにする。そいつは自分の爪と牙でネズミ捕りに勤しみ、人の横で敷き布の上に寝そべっている」

 なんてのもあります。(訳はなんとなくなので自信はないですが…)

②「中国絵画を研究する上で、大変なことや他の分野にはない調査方法は?」

 中国語が読めない(致命的〜!!)

 中国の絵画なので研究資料はまあ当然ほぼ全て中国語なんですよね。
 漢文はもう本当にめちゃめちゃ頑張ればなんとか……みたいなところがありますが、現代中国語はまだまだ圧倒的に実力不足です。泣きながら辞書引いてます。先生にもやんわり勉強しようね〜と釘を刺されています……精進します……。

他の分野にないところ…もしかしたら逆に西洋美術とかの方に共感が得られるかもしれませんが、文人画は前提となる知識が非常に多いです。唐やもっと前の時代で有名な詩や故事、文章なんかを後世の文人はみんな当たり前のように知っていて、それを踏まえた作品をたくさん作ります。あーこれは杜甫ね、とか、う〜ん陶淵明だな、とか、とにかく見ている人もそれがわかっている前提で絵を描きます。そうなるとこっちはもうイ〜〜〜ッとなりながら原典を当たってそれを示す必要が出てきます……。

橋本さんが普段使用している辞書。何巻にもわたっており、2枚目で開いているものはなんと1巻まるごと索引だそう…
研究室の橋本さんの机にある、水墨画を立体にするワークショップで作った作品。

清の時代の文人画を扱っているんですね!
個人的に、漢字が並んでいるだけで「昔のかしこまった文」をイメージしてしまうので、フワフワの文章うれしいです。
中国語との戦いや、文人同士の高度な知識を辿る作業、確かにイ〜〜〜ッとなりますね…。

続いて、自粛期間の研究の進め方についてお聞きします!
今年度は例年度と比べ、研究環境や心境に何か変化はありましたか?

◎自粛期間の研究のすすめ方

ほぼまったくと言っていいぐらい学校に行かなくなっちゃいました。去年の方が(科目履修などで)行ってた…。
でも実を言うと、今ずっと進めている作業は画像情報の整理なのでそんなに困ってはいないんですよね。複雑だ……。
なので自宅でひたすらモニターや紙の資料とにらめっこを続けています。ステイホーム向きですね。

◎春先はどうしてた?

そこそこ大変な目に遭いながらも無事合格できて入学できたので、学校に通えないのはやっぱり残念でしたね…。家にオンライン授業の設備もなかったので、ウワ〜ッになりながら取り寄せてました。心境はそこまで変わってないかもしれません。
でも実はこのコロナのせいで私の研究にむちゃくちゃに関係ある展覧会がね…延期に…これはむちゃくちゃ悲しかった…オォ……。
来年やるみたいなので、何も起こらないといいなあ……。

やっぱり総芸・芸術学はステイホーム耐性が高いですよね…
展覧会が開催されない…! 本物を見る機会が減ってしまうという影響もあるとは…

まだまだ先の見えない状況ではありますが、今後の研究についてどんな風にすすめていきたいか、展望をお聞かせください!

大学に直接いかなくても作業は進みますが、やっぱり研究室が恋しいね…

◎今後の研究の展望について

まずは今やっている金農の作品の整理をやれるところまで進めたいですね!
漢詩の解釈や漢字一文字の読み方で、竹浪先生と日付が変わるまでラインとかすることになるんですよこれが……。
ネバーエンディング漢文訓読ストーリー……。

修論〜〜〜ッ早いよほんと 早すぎる あと2年は欲しい……でもぼちぼち動いてはいるのでとりあえず冬の間に目の前の課題と戦っていきます……。

私が身を置く分野は、そもそも生きている間の時間を全部捧げてもほんの一部しか知れない程の大きさなので、気長にじっくり真面目にやっていくしかないな〜と思っています。
だから逆に言うとそんなに全体を通して焦りはないんですよ。のんびりやっていきたいです

私の研究で少しでも多くの人が「中国絵画っておもしろ〜!!」と思ってもらえたらいいな〜。なので、このご時勢でもマイペースに自分が楽しめるように進めていきたいです!

研究って永遠ですよね……俺たちの戦いはこれからだ!という感じでしょうか。
作品展での研究紹介も楽しみにしております!
ありがとうございました〜!

インタビュー: 野村翠

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