Kyoto City University Of Art annual exhibition 2020

Natsumi Yamanishi / Nana Kawashima 山西 なつ美・河嶋 菜々 漆工・日本画

最後のインタビューは、漆工細目修士1年の山西なつ美(やまにし・なつみ)さん・日本画細目修士1年の河嶋菜々(かわしま・なな)さんです。2020年10月13日(火)〜15日(木)に開催された2人展「うつわとにわ」(京都市立芸術大学小ギャラリー)にお邪魔し、感染症対策に留意しながらお話を伺いました。

「うつわとにわ」では、山西さんの漆の作品と河嶋さんの日本画の作品が一つの会場に展示されていました。

展示室を入って左手には山西さんの、右手には河嶋さんの作品があり、正面にはお2人の作品が同じタイトルで展示されています。それぞれ共通のタイトルがあり、異なる素材による表現がゆるやかに関係性を持っているのが印象的です。

《うつわとにわ》(小ギャラリー)
展示図面(インタビュアーのメモ入り)

お時間いただきありがとうございます! 会場の構成やそれぞれの作品のバランスがとても素敵な展示で、ぜひ詳しくお話していただけたらと思います。

この展示は、当初は違う時期に行われる予定だったんですよね。どのような流れで開催に至ったのでしょうか?

(山西さん)元々は2019年末に別々で展示をする予定だったんです。その後ギャラリー使用申請で抽選に落ちちゃったり、自粛期間で大学に来れなくなったり、いろいろあって…

(河嶋さん)そんな感じでずっと展示ができなかったんですけど、7月にweb上で展示をやってみることにしたんです。2人とも大学院試を受けて修士課程に進んだばかりだったので、修士の2年をコロナで無駄にするのはゆるさんぞ、みたいな気持ちでした(笑)。

(山西さん)そうそう(笑)。半ば意地というか、勢いでweb展示に踏み切りました。

ゆるさんぞの気持ち(笑)そうですよね、せっかく入学したのに活動が制限されてしまうもどかしさは、学部の新入生でも同じ声が多くあったように思います。

web展示も拝見していたのですが、うつわと絵がコラージュされているサムネイルがとても可愛かったです! 実際にやってみて、手応えはどうでしたか? 

(河嶋さん)見てくれてありがとうございます…! サムネイルは私がPhotoshopで制作したんですけど、色味調整などはけっこう苦戦しました。実際に目の前にしたときと写真とでは雰囲気が違って見えたりして。でも、(山西さんの)漆の作品は編集しやすかったです。輪郭がはっきりしてて、切り取りとか選択がしやすくて。

(山西さん)そうそう。あとは、webの芳名録でいろいろ感想をもらえたのがありがたかったです。

(河嶋さん)好意的なコメントが多くてびっくりしました。いろいろしたためてもらったよね。

(山西さん)すごい長文でいただいたりね。私の場合は「ぜひ本物も見たいです」って言っていただいたのがいくつかあったな。やっぱり立体作品なので、見ている側も「実物は違って見えるだろう」っていうのがイメージしやすかったのかも。

(河嶋さん)その点、私は平面なので、色味とかが違っても元々そうだったように見えちゃうんですよね。だから「本物を〜」っていう感想はそこまで多くなかったかな。実際は岩絵具がキラキラしてたり、表面が盛り上がってる部分があったりするんだけど、それがうまく伝わってない感じがちょっともどかしかった…
あと、個人的にはDMの郵送数がいつもより増えました。ちょうど自分が自粛期間で文通にはまってたのもあるんですけど、移動しなくていいから気軽に「来て!」と言えるのはよかったですね。

《白昼夢》《宙でふわり》
(web展示・サムネイル画像)
《白昼夢》《宙でふわり》
(小ギャラリー)

芳名録で感想をたくさんいただけたとは…! 会場だと他に人が在廊していることもあるので、落ち着いて感想を書きづらいかもしれないですね。名前も次に書く人に見えてしまったりしますし。

サムネイルと小ギャラリーでの展示を比べると、確かに(実際はこうなっていたのか!)という気づきがあります。展示している側としてもそういった変化はありましたか?

(山西さん)お互い別々で制作してて、作品のサイズ感を知らなかったから、実際に展示してみて思ったより違うな…?ということはあったよね。何センチ×何センチとか、数字では分かってたんだけど。あれ…?みたいな(笑)。

(河嶋さん)そうそう。あと、小ギャラで展示できることが決まったのがけっこう急だったから、お互い公募に出してたりして手元にない作品もありました。私の場合は急いで新作も作ったな。

(山西さん)webで展示してた《ゆきどけ》の器は、今は会津で展示されてますね。なので小ギャラには展示してないんですけど。そういうことも今回の展示ではありました。

なるほど、web展示をしている間に実物を別で出品することも確かに可能ですね…
同じタイトルで、webとギャラリーで2回展示をしているのはあまり見たことがなかったので、お話とても面白かったです!

続いて、自粛期間(2020年春〜夏頃)の制作についても、それぞれお伺いしたいです。

(河嶋さん)私は道具を全て持ち帰って、家で制作していました。もともと家のベランダをテーマにしていたので、引き続きそれをしつつという感じで。この期間で初めて一輪挿しのモチーフも試してみました。制作とあまり関係ないかもしれませんが、自粛期間はわりと丁寧な暮らしをしてた気がします。

この展示に向けて3ヶ月で10枚くらい絵を書いたんですけど、なかなかない経験でしたね。ロフトベッドの下と床を使って、他が乾くのを待ちながら進めるという感じでした。

《冬のあさ》(web展示・サムネイル画像)
自宅での制作風景

3ヶ月で10枚…! 同時進行で複数の作品を作るの、なんだか漆の制作と似てますね。

(山西さん)私も全部持ち帰って家で制作してました。もともと大学の制作室が好きなのもあって、家での制作というのはこれまでしてなかったです。先生から材料を送ってもらったり、ムロ(漆を乾燥させるための箱や倉庫)が家にないので段ボールで自作したりして。先生から「もっとしっかり作った方がいい」って言われたけど(笑)。自作ムロは1年くらい使えたんですが、それでも小さい作品しか入れられないので… 今は大学でもっと大きい作品も作ってます。

《ふゆのあさ》
山西さん自作の段ボールムロ

特に工芸科の人たちは設備や道具も特殊なので、家でやるときはそれぞれ工夫しているんですね。教授から送ってもらえるのとてもありがたいですね…

(山西さん)そうだね。漆工では半期が終わったタイミングで前期展をやっているんだけど、今年は中止になっちゃって… 陶磁器専攻の前期展では土に限らずスケッチとかいろんな素材で出していて、けっこう新鮮で面白かった。

(河嶋さん)日本画も前期展みたいなシステムがほしいね。専攻全体で人数がすごく多いので難しいのかもしれないけど… 個人でSNSに上げたりして発信していくことが多いですね。

(山西さん)2回生の地面課題(日本画専攻で地面を描く課題)とか、Twitterですごくバズったりするよね。数年前くらいから、みんなSNSでの告知がうまくなった気がする。

(河嶋さん)わかるわかる。

確かにそうですね。作品展委員でも前年度の先輩方の運用を参考にしながら、SNSでの広報活動に力を入れてますし…

現在(10月)、そして作品展に向けてはどんな作品を制作していく予定でしょうか?

(河嶋さん)現在は引き続き、庭の風景や植物をテーマに制作しています。今回の展示では明るくて眠たくなるような時間帯の庭を描いていたのですが、作品展では夜をテーマに描きます。日々自宅の庭をスケッチしているので、夜暗くてもどこに何があるか分かっていて、見なくても描けるんですよね。そうすると、もう咲いていない花のことも思い出して、その記憶の繋がりが星座のようだと感じました。描いているものは庭ですが、夜や星座空間を連想していただけると幸いです。

(山西さん)私はこの展示ではうつわを中心に出品したんですが、今は全く違っていて、大きめのオブジェを作っています。コンセプトとしては、「他人と比べず、自信を持って生きていきたいよね」みたいな感じ… 構想段階では、ジンベエザメとかペンギンとかのスケッチをたくさんしています。「漆の艶が活きるカタチ」を意識して作品を作っていて、それはこれまでの作品にも言えることなんですが、今回はそれに加えて展示空間づくりも大切にしたいと思っています。

お2人の作品が、これからそれぞれどのように広がっていくのかとても楽しみです。 たくさんお話いただいてありがとうございました!

インタビュー: 野村翠

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